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旧街道ウォーク315★年末特別企画「古代東山道武蔵路の遺構を訪ねて」活動報告──────── 

主 旨●1995年に西国分寺の鉄道学園跡地から、古代道路の遺構が発掘されました。幅12mの直線道路が南北490mに渡って確認され、奈良時代の古代東山道・武蔵路(東山道本道から武蔵国府に至る連絡路)であるとされています。遺構は現在、都市再生機構の団地内に埋戻し保存され、地上部には古道をイメージした遊歩道が造られています。今回は、武蔵国府のあった府中から武蔵国分寺跡を経て、鎌倉街道に至る古代道路の経路を追体験します。
広大な武蔵野に古代を幻視しましょう!

日 時●2006年12月23日(土・祝)13時〜16時半

コース●府中駅南口再開発〜大國魂神社(参拝)〜参道ケヤキ並木〜旧国分寺街道(府中グリーンタウン)〜府中刑務所脇〜武蔵國分寺跡〜お鷹の道+真姿の池(湧水)〜七重の塔跡〜現・武蔵国分寺〜古代東山道・武蔵路の保存遺構〜姿見の池〜西国分寺駅南口再開発 <約4キロ>

参加者●
岩田 清、加藤伸子、清水俊哉、高梨健一、古里 実、村松紀明、脇野真澄、脇野陽子、大竹 亮(コーディネイター) 以上、9名

概況説明●師走の快晴の空の下、武蔵府中から国分寺まで古代史跡を訪ねて歩きました。まずは大國魂神社に参拝し、境内の大銀杏や参道欅並木、そして国分寺崖線の緑とお鷹の道や真姿の池の湧水など、自然の恵みを味わいながら歩き、武蔵国分寺跡ではその伽藍と塔の壮麗さに思いをはせ、ついに古代東山道遺構に至って古代道路の壮大さを実感しました。また途中、こうした歴史的風土と調和した府中や西国分寺の再開発や住宅団地などにも立ち寄りました。終了後、西国分寺で忘年会となり、この1年を振り返って楽しみました。

評価結果●全体に高い評価となりました。特に、古代史跡である大國魂神社、武蔵国分寺跡、古代東山道遺構と自然の恵みである国分寺崖線(お鷹の道+真姿の池)は、参加者一同に非常に高く評価されています。自然や歴史的風土を大切にし、まちづくりに取り組んでいる地元住民・行政の姿勢がすばらしい成果を上げつつあるのでしょう。すばらしいことです。
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<参考>
古代官道の解説●
古代には畿内を起点に七つの官道が全国へ延びていたが、内陸部を通って関東から東北に至るのが東山道である。武蔵国ははじめ東山道に所属していたため、支道(武蔵路)で連絡したが、後に東海道に所属替えになって、武蔵路は廃止された。古代官道の特色は、国府と国府を最短距離で結ぶことにあり、一直線に伸びる広幅員の道路は、後代の鎌倉街道や江戸時代の街道よりもはるかに立派で壮大である。

<参加者による評価>

1■府中駅前地区(再開発×残存地区) 評価:3.33(内訳 AABBBC)
評価A:ケヤキ並木に面する再開発ビルは、1階を広く後退させ、その屋外を賑わいのある使い方をしていた。また、3階より上部も後退させるなど、ケヤキ並木への配慮が行き届いている。華やかさと心地よさ両方のある空間だった。それ以外は、まあ、一般的な再開発でしょう。 残存地区は、良くある密集地区で、まあまあ魅力あります。ここの再開発にあたっては、低層部の界隈性がにじみ出るような設計をして欲しいです。
評価A:再開発ビルは欅並木の景観に配慮して高さを抑え、賑わいを創るように工夫されている。一方で、甲州街道旧道がマンション街道と化しているのが残念。以前は風情ある旧家が散見されたようだが・・。
評価B:駅から大國魂神社の参道につながる立派な欅並木を損なわないようにセットバックした再開発は評価できるが、京王線の高架にはがっかりさせられた。

評価B:再開発のために作ったデッキから残存地区が良く見え、地面を歩きたくなりました。逆説のデッキです。
評価B:あまり意識していなかったので、コメントの書き様がありません。ただ機能重視の洗練された都市型駅前整備と、下町風のゴチャゴチャした商店や住居が入り混じっていた気がします。
評価C:Wikipediaによると、府中駅の南西側直近の地区は、府中駅高架化事業に続く南口再開発事業の中で他に比べて若干事業が遅れている地区のようで、今後再開発が進んでいくようです。あのような町が少なくなっていくのも味気ない気がします。

2■大國魂神社+参道欅並木  評価:4.67(内訳 AAAAAB)
評価A:大国魂神社は、さすがに武蔵の総社としての貫禄十分だった。ケヤキ並木は、その一本一本の幹の太さと高さに圧倒されてしまう。さらにそれらが並木として貫いている姿は、見事でため息が出てしまう。なお、神社裏手にあったイチョウの太さと高さにも声を失ってしまった。思わず、木の生命力を感じたくなって、静かに触れてしまったほどでした。
評価A:武蔵の国総社の風格。古の時代から現在まで、長い歴史を偲ばせる社と欅並木でした。
評価A:大國魂神社の本殿裏手に思いがけず立派なイチョウの木があり、また、馬場大門欅並木も立派で壮観でした。
評価A:境内と欅並木が一帯となって格調高い歴史空間を形づくっている。
評価A:欅並木も立派だし、大國魂神社は、元多摩地区住民にとっての誇りです。
評価B:神社裏のイチョウの大木には驚いた。ケヤキ並木はだいぶ傷んでいるように見える。

3■旧国分寺街道(府中グリーンタウン団地+商店街) 評価:2.33(内訳 BBBBCC)
評価B:駅から離れているのに、意外と元気で、車も少なく安心して歩ける商店街に好感がもてました。
評価B:生活しやすい団地と商店街の組み合わせに好感が持てる。空間もヒューマンスケール。
評価B:特に印象に残ったのは、なにげない公園の中に古道の遺構があったこと。なんとなく、古き時代の趣きを感じました。
評価B:グリーンタウンは、都市機構団地としては一般的なもので、高さや配置は適当だと思った。また、樹木もよく保存されていると感じた。商店街は、駅から離れているし、周辺に特段の施設もない割りには、まあ栄えていた。この道が、府中駅方面への歩行者や自転車利用者の中心的な役割を果たしているためだろう。
評価C:グリーンタウン団地では、野良猫に関する張り紙が印象的でした。また、商店街は、シャッターの閉まっている商店が散見され、少し寂れつつあるような印象を受けました。
評価C:団地だけでは商店街も厳しいのだろうか、活気に乏しい。

4■府中刑務所(塀とセットバック) 評価:2.33(内訳 BBBBCC)
評価B:単調だけど一直線に歩行者空間が広がったことを評価しましょう。国分寺市は都市景観賞まちなみ部門として、ちゃんと表彰していました。

評価B:平成16年に「まちなみ部門」の都市景観賞となっていました。刑務所と聞けば「暗い」「汚い」などのイメージを持つ人が多いと思います。しかし、この地域で生活される方々はそういったイメージを払拭できるようなまちづくりを望んでいるでしょう。そう考えると良かったと思います。
評価B:以前は、道路際に刑務所の灰色のい塀がそびえていて、自動車で脇を走り抜けるだけでも嫌な気分だった。それが、5m程度もセットバックし、周囲の住宅地への配慮がなされ、良くなったと思う。これまでの暗く寒々しい塀を見たことのある人は、日本全体の人口に対しては僅かだ。だから、塀を見て犯罪を思いとどまるというような抑止効果は期待できない。そうなら、周辺に配慮した整備は良いことだと思う。
評価B:かつての灰色の高いコンクリート塀の方が、本来の目的を全うしていると思われる。周辺住環境への配慮も大切かもしれないが、こうも美しくしてしまうことは疑問である。
評価C:以前の塀は、良くも悪くも機能とデザインが一致していた。新しい塀は、明るく親しみデザインだが、非常識な高さと長い直線の単調さはそのままなので、奇妙な空間になってしまった。都市デザインの失敗作。建築家やデザイナーを起用し、現代の刑務所にふさわしいデザインをお願いしたい。(そもそも高く頑丈な塀で囲うことがIT時代に合わないのでは)
評価C:3億円事件の犯人が女子校生だったという映画「初恋」(平成18年6月公開)で、宮崎あおいさんが主人公を演じておられて、あの映画のような風景に出会えるかと期待していましたが、塀が新しくなっており、明るい雰囲気になっておりました。まぁ、映画の撮影も他の場所で行われたのでしょうが、ちょっと残念でした。

5■武蔵国分寺跡+七重の塔跡 評価:4.00(内訳 AAABBB
評価A:国分寺崖線の緑を背景に、南向きにそびえた往時の壮麗な姿を彷彿とさせる。これだけ広い史跡公園だからこそ、である。参道も含めて往時の空間を再現してもらいたいもの。
評価A:七重の塔跡を含め、武蔵国分寺の規模の大きさに感嘆。

評価A:広々とし、市民の憩いの場のような印象。娘も切り株で遊び楽しんでいた。
評価B:国分寺崖線を背景に当時の広がりを感じました。周りの住宅地も低層に抑えていて、良いと思います。
評価B:わりと良く整備されていたように思います。周辺の発掘作業が進められているようで、新たな発見があるか楽しみだと思いました。
評価B:国分寺本堂遺構の大きさに驚いた。また、その寺の敷地の広大さにも驚いた。現在は、その寺域全体を遺跡公園として整備している段階だったので、完成が待ち望まれる(整備が終わっていればA評価になるでしょう)。奈良から遥か遠く離れたこの地に、このような大規模寺院を造らせた時の権力には驚く。だけど、一般の人々は、そのために辛い思いをしたんだろうな。

6■国分寺崖線(お鷹の道+真姿の池) 評価:5.00(内訳 AAAAAA)
評価A:非常に良く整備され、雰囲気も良く歩きやすい道でした。また、真姿の池湧水群では、あれほど大勢の皆さんが、汲みに来られているとは思いませんでした。
       
評価A:今も残る国分寺崖線の湧水を活かした自然な整備に感心しまいした。崖線を背にした立派な農家屋敷がすごい。
評価A:崖の下の農家の垣根沿いに、せせらぎの小道が長く続いている。水源地の姿が保存され、往時のハケというものを体験できた。地元の人たちがこの風土を大切にしている気持ちが伝わってくる。
評価A:湧き水流れる細い道は紅葉が美しく、晩秋を楽しむことができた。
評価A:ハケの道の湧水は、昔のから現在生活されている人々まで水との係りを持ち続け、気持ちの良い遊歩道でした。
評価A:国分寺崖線の湧水や水路を活かした、とても心地の良い散歩道。この崖線の敷地は個人の所有地のようだった。古くからの地主で、今も大切にこの地を守っているようだ。しかし、接して上流側の崖線には、住宅が立ち並んでいた。今後、相続とこの景観・空間の保存等の問題をどう解決していくのか、その仕組みは既に整っているのか、気になった。

7■古代東山道遺構(団地内保存+イメージ復元) 評価:4.67(内訳 AAAAAB)
評価A:1300年前の遺構を、空地+歩道として整備し、今に伝えていることを高く評価したい。
  
評価A:古代道路の遺構が、わずか十数年前に発掘されたということが不思議に思われる。幅12mが一直線に続くその様子は想像を超える。
評価A:古代官道は最近になって各地で発掘されているが、これだけの長さを発掘し、保存したのはすばらしい。実際に現地に立って歩くと、往時の壮大さが伝わってくる。現在は隣に高層住宅が建つが、何もなかった時代には、広い道路幅と長い直線の効果は圧倒的だったろう。
評価A:あれだけ大きな遺構を残す事は大変な事だと思います。3回の修復工事が行われた事の説明など大変興味深かった。まっすぐな幅広い道路を実感できた事は驚きでした。
評価A:1300年余前に造られた道路だとは、信じられなかった。幅員12mの直線の道。江戸時代が始まったのが今から400年前。それより3倍以上も、気が遠くなるくらい昔にこんな道を造らせたなんて! また、普通なら、こんな凄い遺構でも、一部しか地表面にその形は残さない。それなのに、ここではまさにここに道があったと体感できる長さを残した。それが凄いです。

8■西国分寺駅前地区(再開発×飲み屋街) 評価3.50:(内訳 ABBB−−)
評価A:中央線と武蔵野線が直交する複雑な構造の駅だが、駅舎と駅前広場の間に再開発ビルを設けたことにより、ヒューマンな賑わい空間を創っている(広い駅前広場は、駅と街を分断してしまう)。北口は対照的に、再開発前のごちゃごちゃ感が気さくで面白い(再開発で失われないか心配)。忘年会も楽しめた。
評価B:駅前にすぐ駅前広場を配置せず、再開発ビルとビルの間の通路を通ってから広場に出る配置にしている点が評価できる。さらにその通路に面して、商品とかが置かれ、活気を出せるようにしているのが良い。
評価B:駅→再開発ビル→駅前広場という順の整備には、目から鱗でした。忘年会のお店を探した曲がった道も味があります。
評価B:この設問に関しまして、あまり注意をしていなかったので、コメンドが思いつきません。沖縄料理店での打ち上げ、忘年会は、気持ちよく酔いました。
評価−:中央線と武蔵野線が交差し、府中街道が通る西国分寺駅周辺は駅前広場がほとんどないに等しく、駅の南北も分断されている。周辺よりも駅そのものを再開発することが望ましく思う。

9■各地で古代道路遺構が続々と発見されていますが、どのような保存・活用の方法がいいと思いますか。 (自由記入)
●そこに道があった。その事実は重要な事だと思います。後世にしかり伝えなければならない事です。出来れば現状をそのまま保存出来れば一番よいかもしれない、しかし地域の開発には大きな障害である事も事実です。したがって、写真、パネル、ミニチュア、解説版、一部現状保存という事だと思います。この点、西国分寺に至る400mに及ぶ遺構の保存は最高の方法だと思います。
●今回の、遺構の幅を示すように描かれた遊歩道は、その活用方法として画期的。12mという幅員を体感しながらまっすぐに延びた歩道を歩いていると、想像力がたくましくなる。
●今回見学した事例のように歩道や公園として活用するほかに、市場や路上カフェ等、人々の集う、商う場にできないでしょうか。
●かつて先人達が、そこを歩いていたことを思い起こさせるような方法。今回のように、舗装面にかつての道路の位置がなんとなく分かるように示しておくのはなかなか良い。あまり派手にやりすぎても驚きがない。気がついたら、ここに道路のあったことがわかったという驚きが楽しい。
●できれば、発掘した路面をそのまま残して見せてほしい(一部が線路際に展示されていたように)。その上を歩ければ最高だが、史跡保存上は無理なのだろう。ここは公団(現・都市再生機構)の理解と努力でこうしたイメージ保存がなされたが、かつて当会でも歩いた茨城県友部流通センター予定地で発掘された全長1キロ近い古代東海道はどうなったのであろうか。

10■今回の企画についての感想
●今回は甲州街道沿いでもあり、比較的身近な所でしたが、普段は車で素通りしてしまうにで、古道東山道遺構、武蔵国分寺跡、大国魂神社、府中刑務所と、古い時代から現在まで、歴史の道を歩いた気がします。すばらしい企画だったと感謝しています。ありがとうございました。(岩田 清)
●府中刑務所から武蔵国分寺へ向かう途中、住宅地の中の公園(万作の木公園)に武蔵国分寺参道口跡があるなど、思いがけないところで昔の事を知ることもでき、興味深い企画でした。(高梨健一)
●府中には1300年も昔に国府が置かれ、東山道武蔵路が通り、さらに鎌倉街道も通り、甲州街道まで通っている。他にも、国分寺街道や小金井街道などなどが、府中から放射状に伸びている。そのため文化遺産も多く、地域の魅力がたくさんあった。また、都心への通勤通学にも便利で、東芝やNECの工場など、産業も立地している。こういう自治体の中心部分は、やはり力があるなという印象を受けた。幼少から社会人の始めの頃まで住んでいた府中を再認識した企画でした。(清水俊哉)
●東山道は、江戸時代の旧街道と違い、今につながるお店などがなく、おみやげが買えません。しかし、はるか1300年を超える先人のエネルギーと技術力に驚かされ、道につながる歴史のロマンを感じることができました。さらにもう少し、東山道を探して歩く企画も良いのではないでしょうか?(古里 実)
●今回コースは4kmと軽く考え、4歳の娘も「初バギーナシ」参加。思いのほか見所が多く、たっぷり歩いたが、武蔵国分寺跡やお鷹の道辺りでは(子供は気持良く歩けるところにくると)狂喜乱舞し、走り回っていた。実は、私、元国分寺市民でありながら、武蔵国分寺跡もお鷹の道も初めて。あっぱれ国分寺市、である。(脇野真澄)

■コーディネイターより
●今回の企画は、街道を歩くのではなく、古代の関東の主要施設(国府総社、国分寺、官道)を巡るというものでしたが、参加された皆さんに好評だったようで、今後も機会があれば実施したいと思います。府中市も国分寺市も、こうした資源を大切にまちづくりを進めているようで、まだまだ整備途上の部分もあり、今後が楽しみです。古代史跡は江戸時代の街道に比べると一般になじみが薄いですが、想像力をかき立てるものがあり、皆さんもこれを機会に関心を寄せてもらえると、企画者としてとてもうれしいです。ありがとうございました。(大竹 亮)

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